株式会社TGM代表の田上です。
2026年10月16日(金)に開催された「EOS JAPANカンファレンス2026」へ、取締役の丸山とともにメインスピーカーとして登壇してきました。

今回お話ししたのは、TGMが導入している経営システム「EOS」と、私たちの会社が変わってきた過程です。登壇資料のタイトルは、「EOSをやめかけた私たちが、ピュアなEOSで組織を変えるまで」。
タイトルの通り、順調な成功談ばかりではありません。導入を急いで現場を混乱させ、創業以来最大の赤字を経験し、私自身が「EOSをやめよう」と考えたこともありました。そこから何を見直し、どうやって組織で成果を出す方向へ進み始めたのか。今回は当日の資料を交えながら、少し詳しくお伝えしたいと思います。
EOSを実践する経営者と、経験を共有するカンファレンス
EOS JAPANカンファレンスは、EOSを導入している企業や導入を検討する企業の経営者、経営チームが集い、実際の経験から学ぶイベントです。
今回の公式プログラムでは、導入企業による事例共有のほか、「プロセス」と「データ」を深く学ぶセッション、パネルディスカッション、参加者が課題を持ち寄るIDSセッションなどが案内されていました。IDSは、Identify・Discuss・Solve、つまり「課題を特定し、議論し、解決する」ための進め方です。
私たちは、会社の未来を描く「ビジョナリー」である私と、経営チームの実行をまとめる「インテグレーター」である丸山の二人で登壇しました。同じ会社の同じ出来事でも、立場が違えば見え方は違います。特にEOSを続けるかどうかで意見が分かれた場面は、二人で話すからこそお伝えできる内容だったと思います。
当日は、EOSで大切にしている「オープンで正直」という姿勢で、良かったことも、失敗したこともお話ししました。
EOS JAPANカンファレンス2026 公式案内を見る ↗
EOSとは? TGMの経営を支える、共通の仕組みです
EOSは、Entrepreneurial Operating Systemの略で、「起業家のための経営システム」です。会社の目指す方向をそろえ、役割を明確にし、課題を解決しながら実行を続けるための考え方とツールがまとめられています。
経営を、次の六つの要素から整理します。
| 要素 | 何を整えるのか |
|---|---|
| ビジョン | どこへ向かい、どう実現するかを共有する。 |
| 人 | 会社の価値観を共有する人と、その人が力を発揮できる役割を考える。 |
| データ | 重要な数値を定期的に確認し、会社やチームの状態を把握する。 |
| 課題 | 問題を表に出し、根本の原因まで話し合って解決する。 |
| プロセス | 仕事の大切な手順を明確にし、組織で実行できるようにする。 |
| トラクション | 優先事項と実行の規律を持ち、計画を着実に進める。 |
TGMでは、2022年頃に書籍『TRACTION(トラクション)』をきっかけに独学で取り組み始め、2024年にはEOSの導入と実践を支援するインプリメンターの久能克也さんとの取り組みが始まりました。現在は、経営チームの年間・四半期の計画から、各チームの週次ミーティングまで、会社の運営に取り入れています。
例えば、四半期に取り組む重要な優先事項を「石」と呼び、誰が何をいつまでに進めるのかを決める。毎週の数値を「スコアカード」で確認し、課題を話し合う。TGMの社内では、こうした言葉が日常の仕事の中で使われるようになってきました。
創業から成長しても、二人で頑張る経営には限界がありました
TGMは2010年、仙台の家賃13万円の小さな店舗から始まりました。全国のお客様からブランド品や洋服、アクセサリーを買い取り、店舗とインターネットで次のお客様へ届ける。ファッションやブランドが好きな方のためのリユースセレクトショップをつくることが、事業の出発点です。

当初は売上が伸びていましたが、やがて成長が停滞しました。その先へ進むために、会社をどう運営すればよいのかが分からなかったのです。
個人で売上をつくる方法や、大企業の経営についての情報には触れられる。一方で、当時の私には、中小企業が組織として次の段階へ成長するための方法が見つけにくいと感じられました。経営者の本を読んでも、会社の条件や強みが違い、そのままTGMに当てはめることはできません。
その間も仕事は増えていきます。集客、買取・査定、販売、採用・育成、数字の確認や現場の判断まで、私と丸山に集中していました。

二人で全力を出せば、その分だけ会社も成長すると思っていました。しかし、現実にはいつも忙しく、思うように利益が残らず、人も定着しない。ビジョンの共有や評価基準、採用・育成の仕組みも不十分でした。
自分たちができることを、ほかの人も同じようにできるはずだと考えていた面もあります。でも、判断基準や手順を共有しないままでは、同じ結果を求めることはできません。二人の頑張りで補う経営そのものを、見直す必要がありました。

一冊の本と、正月の問い合わせから始まったEOS
2022年頃、顧問税理士さんから勧められたのが『TRACTION』でした。ビジョンを描き、実行につなげるという考え方に、自分たちが求めていたものを感じました。
経営チームで何度も読み、年間の経営計画や四半期のミーティングでも、本と照らし合わせながら実践しました。少しずつ事業は拡大していったものの、各部署へどう落とし込むのかが分かりません。経営チームの中で理解することと、現場で使えるようにすることの間に、壁がありました。
そこで2024年1月3日、久能さんに問い合わせのメールを送りました。「EOSが会社を成功に導く良い経営手法だと考えているので、ぜひマスターして、より良い会社にしたい」。その思いを、そのままお伝えしたメールです。

正月の問い合わせにもかかわらず、返信が来たのは約20分後。このやり取りから、久能さんとのお付き合いが始まりました。
専門家と進めるEOSは、書籍だけで取り組んでいた頃とは全然違いました。ただ、ここからすべてが順調に進んだわけではありません。
導入を急ぎすぎて、「任せるための準備」が抜けていました
EOSを導入すれば会社が良くなる。そう思った私たちは、全社への展開を急ぎました。経営チームが十分に理解し、組織の上の階層から段階を踏んで進めるべきところを、「分かったつもり」で一気に進めてしまったのです。

振り返ると、現場に渡していたのは権限だけでした。会社が何を目指すのか、誰がチームをまとめるのか、どんな手順で進めるのか、何の数値を確認するのか。任せる前に整えるべきことが、曖昧なまま残っていました。
任せられた側も、何をどう進めればよいのか迷います。私も「本当にできているのだろうか」と気になり、結局チェックを重ねてしまう。任せると言いながら、安心して任せられる仕組みを用意できていませんでした。

その混乱は業績にも影響し、創業以来最大の赤字を経験しました。事業を続けられるのかという危機の中で、私は「EOSをやめよう」と考えました。
EOSという仕組みを導入することと、その考え方を理解し、正しい順番で使えるようにすることは違う。当時の失敗は、今の私たちにとって非常に大きな学びになっています。
「使いこなせていないのに、なぜ今やめるのか」
大きな赤字に対し、私と税理士さんは、まず止血が必要だと考えていました。EOSを導入しても数字は良くならなかった。このまま続けてよいのか、という判断です。
一方、丸山の考えは違いました。二人で頑張る経営の天井を越えるために、今ここで続ける必要がある。そもそも、私たちはまだEOSを十分に理解し、実践できていないのではないか。

「使いこなせていないのに、なぜ今やめるのだろう?」
丸山の想い/登壇資料より
それまでの丸山は、私の考えを実行し、強い行動力で事業を支えてきた人です。その丸山が、会社全体のために、私と異なる意見をはっきり伝えました。
振り返ると、このとき、TGMに本当の意味でのインテグレーターが生まれたと感じています。社長が言ったことをそのまま実行する立場から、会社全体に何が必要かを考え、経営チームの結果に責任を持つ立場へと変わった瞬間でした。

私も、ほかの経営手法に目移りするのをやめ、EOSに集中すると決めました。自己流の解釈を見直し、基本の考え方とツールを理解して、実践し直す。この「ピュアなEOSに向き合う」という決断が、第二創業期への出発点になりました。
ピュアなEOSに向き合って、何が変わったのか
見直したのは、一つの会議や一枚の資料だけではありません。会社の方向性、人の役割、数値、課題の解決、仕事の手順、実行の仕方を、それぞれつながるように整えていきました。

① 自分たちの役割が分かり、安心して任せられるようになった
私にとって大きかったのは、権限移譲の考え方が変わったことです。以前は、任せた仕事のすべてが気になっていました。任せ方が分からなかったからです。
今は、重要な手順を共有し、それを実行する人の役割と責任を決め、毎週の重要数値で状態を確かめる。その全体をチームのマネージャーが管理する、という形を整えてきました。

その土台になったのが、A/C(Accountability Chart/アカウンタビリティ・チャート)です。誰がどの役割を担い、どの結果に説明責任を持つのかを明確にする組織図です。
私はビジョナリーとして会社の未来を描く。丸山はインテグレーターとして実行をまとめる。マーケティング、セールス、バックオフィスにも、それぞれ必要な役割がある。仕事を抱え込む前に、会社にどの役割が必要なのかを考えられるようになりました。
もちろん、経営チームの席をすべて埋められたわけではありません。兼務も残っています。それでも、何が足りず、どの役割を担う人が必要なのかが明確になったことは、大きな前進です。
② 社員の自主性が育ち、数字をつくる組織へ変わり始めた
手順と役割、責任を明確にして任せることで、自分で考え、数字をつくろうとする人が増えてきました。私たち二人が現場の不足を補い続ける状態から、各チームが自分たちの仕事と成果に向き合う状態へ、少しずつ変わっています。
これらの変化をEOSだけで説明できるとは考えていません。事業への理解を深め、店舗を強化し、自社のビジネスモデルをつくってきたことも関わっています。ただ、その取り組みを組織で実行するうえで、EOSは私たちの大きな土台になっています。
数字を確認する際には、キャッシュフロー、つまり会社のお金の流れを捉える視点も大切だと感じています。忙しさや売上だけに目を向けるのではなく、利益と資金を含めて経営を考える必要があります。
③ 弱みを見せ合い、率直に意見を伝えられる関係が育った
EOSを通じて変わったのは、業務の進め方だけではありません。一緒に働く人との向き合い方も変わりました。
例えば、前職でも一緒に働いていた年上の長田さんに、私は気を使い、言いたいことを十分に伝えられていませんでした。そこで、関係を良くするための具体的な約束として、「四半期に一度、二人で飲みに行く」ことを続けました。
繰り返す中で信頼が深まり、その後、長田さんが思っていたことを面と向かって私に伝えてくれました。社長だから遠慮する、年上だから言いにくいという関係のままでは、高い目標に一緒に向かうことは難しいと感じます。

私が考える心理的安全性は、弱みや困り事、異なる意見を率直に出せることです。うまくできないところも認め、相手を理解したうえで、必要なことを話し合う。そうした関係をつくることが、大きな目標へ進む土台になっています。
④ 能力に加え、価値観と役割への適合を大切にするようになった
TGMが大切にしているコアバリュー、つまり日々の判断や行動の基準となる価値観は、「誠実」「ファッション」「チームワーク」「ファン作り」「成長志向」です。
採用でも、経験や能力とともに、この価値観を共有できるかを大切にしています。EOSの「ピープルアナライザー」は、その人が会社の価値観に沿っているか、役割に合っているかを話し合うためのツールです。
役割への適合は、GWC(Get it・Want it・Capacity)、つまり「その仕事を理解しているか」「やりたいと思っているか」「担える能力や余力があるか」という視点で確認します。
印象に残っているのは、バックオフィスに応募してくださった方が、入社前からEOSの本を購入して読み、面接に持ってきてくれたことです。会社の考え方を理解しようと、自分から行動してくれたことがうれしかった。「こういう人と一緒に働きたい」と思える出会いが増えていると感じます。
⑤ マネージャーが、チームを率いて成果に責任を持つようになった
EOSでは、LMA(Leadership・Management・Accountability)、すなわちリーダーシップ、マネジメント、説明責任を重視します。
丸山が店舗のシニアマネージャーの役割を担ったときも、すべての商品知識や営業知識を最初から持っていたわけではありません。それでも、店舗チームにEOSを導入し、方向を示し、実行を管理することで、登壇資料で紹介した店舗業績は前年比130%超へと成長しました。

現場で一番仕事ができることと、チーム全体で成果を出せるようにすることには、それぞれ必要な力があります。組織の上の階層で何を担うべきかが、私たちにも明確になってきました。
⑥ 社員の声から、前進と次の課題が見えるようになった
14期第2四半期の事業方針説明会のアンケートでは、「会社の中での自分の役割を再認識できた」「ここで働いていたい」「新店に向けて協力したい」といった声が寄せられました。
一方で、「役割が変わった理由をもっと知りたい」「略称だけが先行している感じがする」という意見もありました。この両方を、登壇資料に載せています。

経営チームの中で話が通じるようになっても、全員に同じように伝わっているとは限りません。「A/C」「LMA」「石」といった言葉を使うだけで理解されたと思わず、意味や理由を具体的に伝え続ける必要があります。
導入初期に、私たちは「分かったつもり」で急いで失敗しました。同じことを繰り返さないためにも、社員の率直な声から改善していきたいと思っています。
東北No.1へ。ファッションクレイジーたちの挑戦を続けます
TGMが目指しているのは、東北No.1のブランドリユースカンパニーです。ファッションを深く愛する人が集まり、ブランドや商品の魅力をお客様に届けられる会社をつくっていきます。
登壇では、3年イメージとして年商30億円、経常利益3億円、従業員80名、セレクトショップ6店舗。10年目標として年商100億円、経常利益10億円という、私たちの目指す姿もお話ししました。いずれも、これから実現していく目標です。

もちろん、そのための課題も残っています。経営幹部やマネージャーの役割を担う人材の採用、EOSの社内理解、評価制度と給与体系、バックオフィスの強化。会社が次の段階へ進むために整えるべきことは、まだたくさんあります。

ただ、以前と違うのは、課題が見えたときに「何から手を付けたらよいのか分からない」という状態ではなくなったことです。課題を整理し、誰が担い、いつまでに進めるのかを決め、チームで見直せるようになってきました。
あのときやめなくて、本当に良かった
私にとってEOSは、中小企業の経営全体を整理するための教科書のような存在です。人、数字、役割、実行など、目をそむけたくなるほど重なっていた課題を、六つの要素に分けて考えられるようになりました。
今は、EOSがなかった頃の経営には戻れないと感じています。とはいえ、悩みがなくなったわけではありません。一つ前進すれば、次の課題が見えてくる。悩みは尽きません(笑)。それでも、向き合い方が分かることは、経営を続けるうえで大きな違いです。

丸山も、会社も自分も潰れてしまうのではないかと感じ、泣きながら久能さんに電話したことがあったと話しています。それほど苦しい時期を越えてきたからこそ、「あのときEOSをやめなくて、本当に良かった」という言葉には重みがあります。
私たちはまだ成長途中です。完成された会社としてお話ししたのではなく、失敗も含めて経験を共有することで、同じように会社を良くしようとしている方の参考になれば、という気持ちで登壇しました。
今回、このような機会をつくってくださった皆様、久能さん、カール・パイザーさん、そしてTGMの毎日を支えてくれている社員の皆さんに感謝しています。同じEOSを使う皆様とも、これから経験を共有し、学び合っていければうれしいです。
『TRACTION』の最後に出てくる、「旅は楽しくなければならない」という言葉が好きです。目標へ向かう過程で、お客様に価値を届けること、一緒に働く仲間が成長すること、会社が少しずつ変わることを楽しみながら、これからも挑戦を続けていきます。
株式会社TGM
代表取締役 田上悠喜
資料画像:EOS JAPAN CONFERENCE 2026 TGM登壇資料より。写真は当日の提供写真を使用しています。EOSの概要はEOS JAPAN公式サイト、イベント情報は公式案内を参照しています。