2026年7月23日、群馬県桐生市にあるセレクトショップ「ST COMPANY(エスティーカンパニー)」さんへお邪魔しました。
今回、代表取締役社長の環敏夫さんと、1時間以上にわたってお話をさせていただく貴重な機会をいただきました。
以前からST COMPANYさんの存在は知っていましたが、実際に店舗を訪れ、環さんの言葉を直接聞き、スタッフの皆さんと接したことで、想像していた以上に大きな刺激を受けました。
店舗を経営するとは、どういうことなのか。
会社を長く続けるために、本当に大切なものは何なのか。
従業員、取引先、お客様と、どのような関係を築いていくべきなのか。
そして、AIやECが急速に発展する時代に、リアルな店舗や空間へ投資することには、どのような意味があるのか。
環さんとのお話には、これからのTGMを考えるうえで大切にしたい考え方が数多くありました。
今回は単なる店舗訪問記ではなく、私自身が経営者として感じたこと、そしてこれからTGMで実現していきたいことも含めて、率直に書き残したいと思います。
群馬県桐生市の伝説的セレクトショップ「ST COMPANY」
ST COMPANYさんは、群馬県桐生市を拠点に、国内外のデザイナーズブランドを取り扱うセレクトショップです。

1978年9月18日の創業以来、婦人服、紳士服、雑貨の販売を中心に事業を展開し、現在は飲食店も運営しています。桐生本店、高崎店、オンラインストアを通じて、ファッションを軸とした独自の提案を続けている会社です。
現在の桐生本店は、単に洋服を販売するだけの店舗ではありません。
国内外のブランドを独自の視点で編集したショップスペースのほか、ギャラリー、カフェ、中庭、キッズルーム、屋上空間などが設けられています。
ファッションだけでなく、食、空間、植物、アート、イベント、人との交流まで含めた、総合的なライフスタイルを提案する場所となっています。(ST Company)
桐生という土地で、約半世紀にわたりファッションの最前線を走り続けてきたST COMPANYさんは、業界内でも地方を代表する名店として知られる存在です。
しかし、実際に訪れて感じたのは、ST COMPANYさんの本当の魅力は、取り扱っているブランドや建物の格好良さだけではないということでした。
その中心にあったのは、環さんをはじめとするスタッフの皆さんの、人に対する誠実さと温かさでした。
ファッションだけではない、総合的なライフスタイルを提案する店舗
ST COMPANY桐生本店には、ショップだけでなく、カフェ、ギャラリー、中庭、キッズルーム、屋上空間などがあります。
2階のカフェでは、コーヒーや季節限定メニューが提供され、食品や器、グラスなどの雑貨も販売されています。
買い物の途中で休憩したり、家族と時間を過ごしたり、商品を購入する以外の目的でも訪れることができる空間です。(ST Company)
服を購入してもらうことだけを店舗の目的にしない。
ファッションを起点として、人が集まり、会話が生まれ、新しい価値観に出会える場所をつくる。
それが、ST COMPANYさんの考える新しい洋服店の形なのだと思います。
商品を購入して終わるのではなく、その場所で過ごした時間そのものが、お客様の記憶に残る。
店舗を一つのメディアとして捉え、ファッションやライフスタイルに関する価値観を、空間全体で表現しているように感じました。
お客様を飽きさせないために、店を変化させ続ける

環さんは、店舗経営では「お客様を飽きさせないこと」が重要だと話されていました。
どれほど格好良い店舗をつくっても、完成した瞬間の状態をそのまま維持しているだけでは、次第に新鮮さが失われていきます。
お客様が再び訪れたときに、前回とは違う発見がある。
新しいブランドに出会える。
デザイナーやつくり手と直接話せる。
自分も参加できる体験がある。
知らなかった地域の食や文化に触れられる。
そのような変化を継続的につくることで、お客様が「また行きたい」と思える店になります。
ST COMPANYさんでは、ブランドのポップアップストア、対談イベント、顧客参加型の企画、地域の方々と連携したイベントなど、さまざまな取り組みを継続しています。
桐生本店のフロアガイドでも、年間を通じてファッションイベントや多様な企画を開催し、建物へ新しい空気を吹き込むことが掲げられています。(ST Company)
重要なのは、単にイベントの回数を増やすことではありません。
「今のお客様は何を求めているのか」
「自分たちだからできる体験は何なのか」
「店舗へ足を運んでいただく理由をどうつくるのか」
これらを考え続け、実行し続けることが重要なのだと思います。
お店は、一度完成させて終わるものではありません。
お客様、スタッフ、取引先と一緒に変化しながら、育て続けるものです。
桐生という立地でも、行く理由があれば人は来てくれる
群馬県桐生市は、東京や大阪のような大都市ではありません。
大規模な商業施設やブランドショップが集中するエリアでもありません。
しかし、地方だから高感度な店舗を成立させられないわけではありません。
その場所にしかない商品がある。
その場所にしかない空間がある。
その場所でしか会えない人がいる。
その場所でしか体験できない企画がある。
それらが重なれば、お客様にとって移動時間は単なる負担ではなく、体験の一部になります。
環さんのお話を聞きながら、私はTGMが仙台・東北で事業を行う意味について考えていました。
東京にあるものを、そのまま仙台へ持ってくるだけでは、仙台で事業を行う意味は薄くなります。
仙台だからできること。
東北だから生まれる商品、人、文化、体験。
それらを私たちなりの感性で編集し、発信することが、TGMの強みになるはずです。
地方にいることを不利な条件として捉えるのではなく、その土地にいるからこそできることを探し続ける。
ST COMPANYさんは、その可能性を実際の店舗経営によって示している会社だと感じました。
AI全盛の今だからこそ、リアルなものへ投資する
今回の訪問で、私が特に共感したのが、リアルな店舗や空間へ投資するという考え方です。
現在は、AI、EC、SNS、オンライン接客など、デジタル技術が急速に発展しています。
TGMも、AIやデジタル技術を積極的に活用していきます。
査定業務の効率化、データの分析、お客様への情報発信、業務の標準化、従業員の負担軽減。
デジタルによって改善できることは、今後さらに増えていくでしょう。
しかし、どれほど技術が進化しても、すべてがオンラインへ置き換わるわけではありません。
実際に商品へ触れたときの質感。
建物へ入った瞬間に感じる空気。
スタッフとの会話。
偶然出会った商品や人。
カフェで過ごす時間。
イベントへ参加した記憶。
帰る際に外まで見送っていただいたときの温かさ。
これらは、画面上の情報だけでは完全に再現できません。
AIが普及し、情報やコンテンツを簡単につくれるようになるほど、人が実際に感じられる体験の価値は、相対的に高くなっていくと私は考えています。
便利さを追求する部分には、デジタルを使う。
人の心を動かす部分には、リアルな体験をつくる。
どちらか一方を選ぶのではなく、それぞれの役割を明確にすることが重要です。
今だからこそ、建物、店舗、接客、イベント、商品、人材といった、簡単にはコピーできないリアルなものへ投資する。
その姿勢を、TGMも大切にしていきたいと思います。
77歳を迎える今も、自ら展示会へ足を運ぶ環社長
環さんは1978年、自らの手で最初のお店を立ち上げました。
それから47年以上にわたり、自ら経営者としてST COMPANYさんを率いています。
そして、今年77歳を迎えられる現在も、ブランドの展示会へ自ら足を運び、商品を見て、オーダーを行っているそうです。
私はこのお話を聞いて、率直に驚きました。
会社を長く経営し、組織ができ、責任ある立場になればなるほど、経営者は現場から離れていくことが多くなります。
もちろん、経営者にしかできない仕事はあります。
事業計画をつくり、組織を整え、数字を管理し、将来への投資を判断することも重要です。
しかし、環さんは経営者でありながら、現在も商品の仕入れという、セレクトショップの根幹に関わり続けています。
今、どのようなブランドが生まれているのか。
デザイナーが何を表現しようとしているのか。
お客様が次に求めるものは何なのか。
それを人から聞いた情報だけで判断するのではなく、自らの目で見て、自ら感じて、決断する。
その姿勢が、ST COMPANYさんのセレクトや店舗づくりに独自性と説得力を生んでいるのだと思います。
77歳になっても、ファッションへの好奇心を失わず、現場へ足を運び続ける。
環さんの姿を見て、経営とは役職ではなく、姿勢なのだと感じました。
長い取引は、苦しいときの姿勢によってつくられる
環さんとのお話の中で、特に印象に残ったのが、取引先との付き合い方についてのお話です。
ST COMPANYさんには、長年にわたって取引を続けているブランドや取引先が数多くあります。
しかし、長い取引関係は、売上が好調なときだけの付き合いでは築けません。
相手も自分も順調なときには、多くの企業が良い関係をつくることができます。
本当の信頼が試されるのは、双方に余裕がないときです。
新型コロナウイルスの影響によって、アパレル業界全体が大きな打撃を受けた時期にも、ST COMPANYさんは展示会への参加やブランドへのオーダーを続けたと伺いました。
店舗にお客様が来られない。
今後の売上が見通せない。
仕入れた商品が予定どおり販売できるか分からない。
そのような状況でオーダーを続けることは、簡単な判断ではなかったはずです。
しかし、苦しいときにも相手との関係を切らず、自分たちにできることを続ける。
その積み重ねが、「この会社とは長く付き合いたい」という信頼につながります。
取引先との関係を、単なる仕入先と販売店という関係で終わらせない。
相手の事業やブランドを理解し、共に継続していく姿勢を持つ。
それは、短期的な利益だけを見ていてはできないことです。
TGMも、取引先の皆様を単なる外注先や仕入先として考えるのではなく、一緒に価値をつくるパートナーとして、誠実に付き合っていかなければならないと改めて感じました。
大きく成長した時期も「バブルのようなものだった」
環さんは、会社が大きく成長した時期についても話してくださいました。
1990年代、ST COMPANYさんは多店舗展開を進め、ピーク時には桐生市、前橋市、高崎市、足利市で合計17店舗、社員70名以上の規模まで成長しました。株式の店頭公開も考えていた時期だったそうです。(ST Company)
しかし、環さんはその時期を振り返り、「バブルのようなものだった」と表現されていました。
この言葉が、とても印象に残っています。
売上や店舗数が急激に伸びると、経営者はそれがすべて自分の実力であるかのように感じてしまうことがあります。
しかし実際には、景気、市場の成長、ブランドの人気、立地、時代の流れなど、さまざまな外部要因が重なっていることがあります。
追い風によって生まれた成長と、自社の本当の実力を混同してはいけない。
会社の規模が大きいことと、良い会社であることも、必ずしも同じではありません。
その後、1999年から2000年の2年間で、ST COMPANYさんは累計1億9,000万円の赤字を抱える厳しい状況に直面したそうです。
環さん自身も当時を振り返り、「何でも思いどおりになる」と考え、驕りがあったことを率直に語られています。(ST Company)
一時的にどこまで大きくなったかではなく、環境が変化した後にも、お客様、従業員、取引先から必要とされ続ける会社であるかどうか。
約半世紀を自ら経営者として歩いてきた環さんだからこそ、この言葉には大きな重みがありました。
TGMもこれから店舗を増やし、会社を成長させていきます。
しかし、売上や店舗数だけを追いかけるのではなく、成長の中身を常に確認しなければなりません。
お客様から本当に支持されているのか。
従業員が成長し、誇りを持って働けているのか。
取引先と長期的な信頼関係を築けているのか。
社会に対して、自分たちにしか提供できない価値を生み出しているのか。
数字が伸びているときほど、これらの問いを忘れてはいけないと思います。
多くの人から支えられた経験から生まれたST COMPANYさんの経営理念
経営的に厳しい状況の中で、取引先をはじめとする多くの方々が、ST COMPANYさんに手を差し伸べてくれたそうです。
環さんは、さまざまな人の支えがあったからこそST COMPANYが存続していることを再認識し、その経験から経営理念をつくられました。
感謝 絆 真心 奉仕
素直 情熱 無我夢中
そして、その言葉に続けて、次のように記されています。
理念なき経営は成り立ちません。
ST COMPANYさんの経営理念は、会社のイメージを良くするためにつくられた言葉ではありません。
会社が最も苦しい時期に、多くの人から支えられた経験を通じて生まれた言葉です。(ST Company)
会社は、経営者一人の力では存続できない。
従業員、取引先、お客様、地域の方々との絆があり、多くの人に支えていただいているからこそ、商いを続けることができる。
そのことを、厳しい経験を通じて深く実感した環さんの、経営者としての決意が込められているのだと思います。
経営理念とは、会社を立派に見せるために掲げる言葉ではありません。
会社が順調なときだけでなく、苦しい状況に置かれたときに、何を基準として判断するのか。
売上や利益と、人との信頼のどちらかを選ばなければならないときに、何を優先するのか。
会社が大きくなり、経営者一人ではすべてを管理できなくなったときに、従業員が何を基準として行動するのか。
そうした場面で、自分たちが立ち返る場所が経営理念なのだと思います。
ST COMPANYさんの経営理念と、TGMのコアバリューに共通するもの
TGMには、
ファッションを通じて三方良しの世界を創る
という経営理念があります。
ファッションやブランドリユースを通じて、「売る人」「買う人」「社会」のすべてにとって価値のある循環をつくることが、私たちの目指す方向です。
そして、この理念を日々の仕事の中で実現するため、TGMでは次の5つのコアバリューを定めています。
- 誠実
- ファッション
- チームワーク
- ファン作り
- 成長志向
今回、ST COMPANYさんの経営理念とTGMのコアバリューを照らし合わせてみると、言葉の表現は異なっていても、その根底には非常に近い価値観があることに気付きました。
| ST COMPANYの経営理念 | TGMのコアバリュー | 共通する考え方 |
|---|---|---|
| 感謝・真心・素直 | 誠実 | 謙虚さと思いやりを持ち、信頼される行動をする |
| 情熱・無我夢中 | ファッション | 好きという気持ちを仕事の原動力にする |
| 絆・奉仕 | チームワーク | 自分一人ではなく、周囲と力を合わせる |
| 真心・奉仕・感謝 | ファン作り | 相手を理解し、期待を超える関係を築く |
| 素直・情熱・無我夢中 | 成長志向 | 失敗から学び、挑戦を続ける |
ST COMPANYさんの「感謝・絆・真心・奉仕」という言葉からは、従業員や取引先、お客様との関係を大切にする姿勢が伝わってきます。
それは、TGMが「誠実」「チームワーク」「ファン作り」を通じて目指しているものと深く重なります。
また、「素直・情熱・無我夢中」という言葉は、77歳を迎えられる現在も、ブランドの展示会へ自ら足を運び、オーダーを続けている環さんの姿そのものです。
ファッションが好きだからこそ、学び続けられる。
過去の成功体験に固執せず、素直に変化を受け入れる。
失敗を経験しても、挑戦をやめない。
この姿勢は、TGMが掲げる「ファッション」と「成長志向」にも通じています。
ST COMPANYさんの理念が、人や仕事に向き合う際の心のあり方を表しているとすれば、TGMのコアバリューは、その思いを日々の仕事の中で実践するための行動の基準だと考えられます。
感謝しているのであれば、言葉や行動で示す。
絆を大切にするのであれば、順調なときだけでなく、苦しいときにも相手との関係を守る。
真心を持っているのであれば、目の前のお客様に合わせた対応をする。
情熱があるのであれば、自ら現場へ行き、学び、挑戦を続ける。
理念やコアバリューは、ウェブサイトや会社案内に掲載するだけでは文化になりません。
従業員一人ひとりの日々の判断と行動に表れて初めて、その会社らしさになります。
今回、ST COMPANYさんの理念に触れたことで、TGMの経営理念とコアバリューについても、改めて考える機会となりました。
両社に共通しているのは、会社の成長を数字だけで捉えるのではなく、人との信頼を大切にし、好きな仕事に情熱を注ぎながら、長く必要とされる会社を目指す姿勢なのだと思います。
2018年の本店移転が、人との付き合い方を教えてくれた
ST COMPANYさんは2018年、現在の桐生本店へ移転しました。

現在の本店は、以前は和菓子工場として使われていた建物をリノベーションしたものです。
最初に物件を見たときは、長期間使われておらず、荒れ果てた状態だったといいます。
しかし環さんは、1階から3階、屋上までを歩いていく中で、立体的な迷路のような建物の面白さに引かれ、「自分がやるのはここしかない」と直感したそうです。(ST Company)
現在の本店は、3層の本館と2層の別館が立体的に交わり、フロアごとに異なる表情を持つ空間となっています。(ST Company)
環さんは、この本店への移転と店づくりを通して、人との付き合い方を改めて学んだと話されていました。
従業員や取引先と、家族のように誠実に付き合う。
相手を信頼し、自分一人の力で会社を動かしていると思わない。
周囲の人たちがいてくれることに感謝する。
現在の店舗をスタッフや取引先の皆さんと一緒につくっていく過程で、その大切さに改めて気付いたそうです。
私は、この「建物が人との付き合い方を教えてくれた」という考え方が、とても心に残りました。
建物は、単なる箱ではありません。
どのような場所をつくるかによって、そこで働く人の動きが変わります。
コミュニケーションが変わります。
お客様との関係が変わります。
会社の文化も変わります。
良い空間が、自動的に良い会社をつくるわけではありません。
しかし、自分たちが大切にしたい価値観を空間として表現し、その場所をみんなで育てていくことで、組織の考え方や人間関係を変えていくことはできるのだと思います。
図面を見ずに決裁するほど、プロを信頼して任せる
現在のST COMPANY桐生本店のデザインには、DESSENCE(デセンス)の山本和豊さんが携わっています。
環さんは、物件を見た際に「この建物をデザインするのは彼しかいない」と考え、すぐに山本さんへ連絡したそうです。(ST Company)
今回、環さんからお聞きして驚いたのは、本店の計画を進める際、細かな図面すら確認せずに決裁したというお話です。
工事が進み、少しずつ形になっていく現場を見ながら、
「こういう感じになるのか」と完成形を知っていったそうです。
通常、大きな設備投資をする際には、細部まで自分で確認し、何度も修正したくなるものです。
しかし環さんは、専門家を信頼し、プロの領域を尊重して任せました。
もちろん、何も考えずに丸投げをするという意味ではありません。
重要なのは、誰に任せるのかを見極めることです。
価値観や実力を理解したうえで、「この人なら、自分が考える以上のものをつくってくれる」と判断したのであれば、中途半端に口を出さずに任せる。
任せた後は、相手の仕事を信頼する。
これは、簡単なようで非常に難しいことです。
経営者が細かい部分まですべてを決めれば、短期的には安心できるかもしれません。
しかし、それでは自分の能力を超えるものは生まれにくくなります。
プロに任せることで、自分の想像を超えたものが生まれる。
そして、任された側も期待に応えようと、最大限の力を発揮する。
TGMもこれから、本社や新しい店舗をつくる機会が増えていきます。
自分たちの理念や目的は明確に伝えながらも、専門領域については信頼できるプロに任せる。
その姿勢を大切にしたいと思います。
スタッフの皆さんの対応に表れていた、家族のような会社
今回の訪問では、ST COMPANY本店の中を、スタッフの方が隅から隅まで丁寧に案内してくださいました。

それぞれのフロアの特徴。
商品の見せ方。
ブランドごとにつくられた空間、カフェや中庭、建物の成り立ち。
一つひとつ、とても丁寧に説明していただきました。
そして帰る際には、スタッフの皆さんが外まで出て、私たちを見送ってくださいました。
形式的な接客ではありません。
会社として決められた動作を、ただ実行しているようにも見えませんでした。
自然に相手を迎え、自然に相手を送り出す。
そこには、普段から人を大切にしている会社の空気が表れていました。
企業理念やコアバリューは、壁に掲げているだけでは文化になりません。
経営者が何を言っているか以上に、スタッフが日々どのように行動しているかに、その会社の本当の文化が表れます。
環さんが話されていた、従業員や取引先と家族のように誠実に付き合うという考え方が、スタッフの皆さんの行動にまで浸透している。
だからこそ、お客様も取引先も、ST COMPANYさんを単なる洋服店ではなく、また帰ってきたい場所のように感じるのだと思います。
将来のTGM本社を、地域に開かれた場所にしたい
TGMでは、近い将来、本社を移転することを考えています。
今回ST COMPANY本店を訪れたことで、私の中にあった将来の本社のイメージが、より具体的になりました。
私は、単に従業員が仕事をするためだけの事務所をつくりたいとは考えていません。
お客様が訪れることができる。従業員が誇りを持てる。取引先や地域の方々と、新しい企画が生まれる。
ファッション、食、アート、地域文化が交わる。
そのような場所にしたいと考えています。
個人的な会社の10年目標としては、将来的に大規模な商業施設を展開したいという構想も持っています。
ブランド品やファッションの店舗だけではありません。
ライフスタイルを提案するカフェや飲食店がある。
地域の生産者や店舗が参加するマルシェがある。
アーティストが作品を展示できるギャラリーがある。
イベントや対談を開催できる場所がある。
子どもから大人まで、それぞれの楽しみ方ができる。
買い物をする目的がなくても、訪れることで何かに出会える。
そのような施設を、いつか仙台・東北につくりたいと考えています。
以前、LIFEのメディアでは、新潟県三条市にあるスノーピーク本社を訪問した記事を掲載しました。
実際にその場所を訪れ、建物や空間を体験したことで、「自分たちの会社も、このように人が訪れたくなる場所をつくりたい」という思いが生まれました。
今回のST COMPANYさんへの訪問によって、その思いがさらに強くなりました。
重要なのは、建物を大きくすることではありません。
そこで、どのような価値を生み出すのか。
どのような人が集まるのか。
どのような関係が生まれるのか。
地域にとって、どのような存在になるのか。
その中身を伴った場所をつくらなければなりません。
ST COMPANYさんの本店のように、建物そのものが人をつなぎ、会社の文化を育てる場所。
TGMも、時間をかけてそのような拠点をつくっていきたいと思います。
仙台・東北でしかできないことを、TGMの強みにする
今回の訪問を通して、地方企業であることの意味について、改めて考えました。
私たちは仙台・東北を拠点に事業を行っています。
東京と比較すれば、市場規模や人口、情報量、ブランドの集積という面で、不利に見える部分もあります。
しかし、東京と同じことをする必要はありません。
仙台には仙台の文化があります。
東北には、東北の自然、食、ものづくり、人の温かさがあります。
まだ世の中に十分知られていない企業、職人、アーティスト、商品も数多くあります。
それらをファッションやリユースと組み合わせ、新しい形で発信することができれば、東京にはない価値を生み出せるはずです。
ST COMPANYさんが桐生で続けているように、地域の中で面白いことを考え、継続して実行する。
お客様が求めていることを考え続ける。
店舗へ来ていただく理由をつくる。
取引先や地域の方々と一緒に企画する。
そして、訪れた方に「また来たい」と思っていただく。
TGMも、仙台・東北でしかできないことを積み重ね、それを会社の強みにしていきます。
全国どこにでもある会社ではなく、仙台にあるからこそ意味がある会社になる。
東北の企業として、地域に誇りを持ち、地域の価値を外へ発信する。
それが、これからTGMが目指していく方向です。
「理念なき経営は成り立たない」を、TGM自身への問いにする
環さんの、
理念なき経営は成り立ちません。
という言葉は、今回の訪問を通じて、私自身に突きつけられた問いでもあります。
TGMもこれから、新しい店舗の出店、本社の移転、新規事業への挑戦、従業員数の増加など、会社として大きく成長していくことを目指しています。
しかし、会社が大きくなればなるほど、売上や利益、店舗数といった数字だけに意識が向きやすくなります。
もちろん、会社を存続させ、従業員の生活を守り、未来へ投資するためには、売上も利益も必要です。
ただし、数字は会社の目的ではなく、理念を実現するために必要な手段です。
会社が成長する過程で判断に迷う場面があれば、TGMの経営理念とコアバリューへ立ち返らなければなりません。
その判断は、三方良しにつながっているか。
誠実な判断になっているか。
ファッションへの情熱があるか。
「私」ではなく「私たち」という視点を持てているか。
お客様のファンを増やす行動になっているか。
挑戦と成長につながっているか。
これらの問いに対して、胸を張って答えられる経営を続けていきたいと思います。
ST COMPANYさんの経営理念は、厳しい経験の中で、人から支えられることのありがたさを再認識した環さんが、自らの生き方と経営を見つめ直して生まれた言葉です。
TGMのコアバリューも、ウェブサイトやクレドカードに掲載するだけの言葉で終わらせてはいけません。
私を含めたTGMの一人ひとりが、日々の判断や仕事、お客様、仲間、取引先との関わりの中で実践していく必要があります。
理念を掲げることではなく、理念を生きること。
その積み重ねが会社の文化となり、長く信頼される会社をつくるのだと思います。
最後に
環さんとの1時間以上にわたるお話は、私にとって非常に貴重な時間となりました。
自ら会社を立ち上げ、約半世紀にわたって経営し、現在も現場に立ち続けている環さん。
その言葉には、経営書や理論だけでは得られない重みがありました。
苦しいときにも取引先との関係を大切にすること。
従業員を家族のように考えること。
会社が大きくなったときにも、自分の力を過信しないこと。
お客様を飽きさせず、店舗を変化させ続けること。
信頼できるプロには、覚悟を持って任せること。
地方であることを言い訳にせず、その土地だからできることを追求すること。
AI全盛の時代だからこそ、リアルな人、場所、体験へ投資すること。
そして、理念を言葉で終わらせず、日々の行動によって示すこと。
今回教えていただいたことを、TGMのこれからの経営に生かしていきたいと思います。

TGMも、ST COMPANYさんのように、長い時間をかけて、お客様、従業員、取引先、地域の皆様から信頼される会社になりたいと思っております。
環社長、貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。
また、店舗内を丁寧に案内してくださり、最後には外まで温かく見送ってくださったスタッフの皆様にも、心より御礼申し上げます。
今回のご縁を大切にしながら、私たちも仙台・東北で、自分たちにしかできない商いを一歩ずつ形にしていきたいと思っております。
株式会社TGM
代表取締役社長 田上