株式会社TGM代表の田上です。

皆さんは、お店に入ったとき、商品をじっくり見る前から「入りやすい店だな」「少し落ち着かないな」と感じたことはないでしょうか。

外から見た店の雰囲気や、入口付近の商品、スタッフの挨拶など、私たちは買い物をするとき、さまざまなところからその店の印象を受け取っています。品揃えや価格だけでなく、こうした部分も「ここで商品を見てみたい」「スタッフに相談してみたい」と思っていただくために大切だと考えています。

ところが、自分たちが働く店になると、お客様として訪れたときとは見方が変わります。商品の場所も店の仕組みも分かっているため、初めて来た方がどこで迷うのか、何を気にするのかに気づきにくくなることがあります。

だからこそ、私が店舗を見るときに最も重視しているのは、お客様からどう見えて、どのように感じられるかということです。

スタッフにとって働きやすい売場になっていることも大切ですが、それだけでは十分ではありません。初めて来た方が入りやすいか、何を扱っている店なのかが伝わるか、気持ちよく商品を見られるか。店を運営する側の事情をいったん脇に置き、お客様の立場で確認するようにしています。

そのため、店に入って最初の3分ほどで見るところは、ある程度決まっています。外観、入店直後の印象、挨拶、商品配置、店内の清潔さという五つです。実際には、入口に着く前から確認は始まっています。

この五つを見るのは、私の好みに合わせて店を直してもらうためではありません。当社が導入しているEOS(Entrepreneurial Operating System)という経営の仕組みに沿って、「証明されたプロセス」や各「コアプロセス」が実施されているかを確認するためでもあります。

決められた作業を行うことは必要ですが、その結果、お客様にとって入りやすく、気持ちよく利用できる店になっているかまで確認することが重要だと思っています。

今回は、私が最初の3分で何を見ているのか、そしてなぜそこを重視しているのかを、五つのポイントに分けて紹介します。

LIFE中倉店の青い扉が印象的な入口
店の印象は、入口に着く前から始まっています(LIFE中倉店)。

ポイント①:実は、店に入る前から見ています

最初に見るのは外観です。お客様が最初に目にするのは、店内の商品でもスタッフの接客でもなく、建物や看板、入口などだからです。

私たちは自分たちの店について知っています。何を扱っていて、どのブランドに強く、どのようなサービスがあるのかも分かっています。しかし、通りがかった方が同じことを知っているとは限りません。

だからこそ、外から見たときに何が伝わるかを意識しています。

例えば、ノボリなどの告知類が適切に配置されているかを見ます。ただ出してあればよいのではなく、通りかかる方から内容が見えるか、入口を分かりにくくしていないか、店として伝えたいことが伝わる配置になっているかが重要です。

ガラスの汚れや入口周辺の清潔さも確認します。ガラスが汚れていれば、せっかくの売場や商品が見えにくくなりますし、入口に汚れがあれば、店内を見る前に気になってしまいます。中をどれだけ整えていても、その手前で入りにくさを感じさせてしまうのはもったいないと思います。

ここでは、お客様の目線にマーケティングの目線も加えています。

「ここは何の店なのか」「自分が見たい商品はありそうか」「少し入ってみようか」と考える方に対して、外観が必要な情報を伝えられているかを見るということです。

店内にいると気づきにくいことも、一度外に出て、お客様が来る方向から見ると分かる場合があります。外観を意識して見るのは、お客様が店に入るかどうかを考える段階から、店舗づくりは始まっていると考えているからです。

LIFE六丁の目店のネオンサインとスニーカー売場
入口から、店のコンセプトと得意分野が伝わる売場を目指します(LIFE六丁の目店)。

ポイント②:入口を入ってすぐの印象を確認します

次に見るのは、入口を入ってすぐの企画売場です。

ここでは、商品がきれいに並んでいるかだけでなく、店が今、何を打ち出したいのかが明確かを見ています。

どのブランドを見てほしいのか、どのような商品を提案したいのか。スタッフの説明を聞かなくても、売場を見てある程度伝わる状態が理想です。

例えば、あるブランドを打ち出したいのであれば、そのブランドの商品が分かりやすくまとまっているかを確認します。いろいろな商品を見せようとするあまり、結局何を紹介したい売場なのか分からなくなっていないかも気になります。

自分たちは企画の意図を知っているので、伝わっているつもりになりやすいところです。しかし、お客様は企画を考えた過程を知りません。目の前にある売場だけを見て判断します。

そのため、「私たちが何を置いたか」よりも、「初めて見る方に何が伝わるか」を重視しています。

LIFE中倉店の明るく整理された衣類売場
商品量が多くても、一点ずつ見つけやすく、回遊しやすい状態が大切です(LIFE中倉店)。

もう一つ、入口を入ってすぐに確認するのが音楽です。

当社が事業の中核としている「ブランドリユースセレクトショップ」は、店舗ごとにコンセプトを決め、それに合ったブランドや商品を選ぶ店です。音楽も、そのコンセプトと合っている必要があると考えています。

落ち着いて商品を見てもらいたい空間なのか、ファッションの楽しさを感じてもらいたい空間なのか。売場のつくりや商品と音楽が合っているかを確認します。曲そのものだけでなく、お客様が商品を見たり、スタッフと会話したりする際に、音量が気にならないかも大切です。

音楽はスタッフが好きな曲を流すためだけのものではありません。その店でお客様にどう過ごしていただきたいかを考えて選ぶものだと思っています。

ポイント③:気持ちのよい挨拶が、すぐに出るかを見ます

TGMでは、接客・接遇を強みとして大切にしています。その最初の対応が挨拶です。

私が見ているのは、お客様が入ってきたときに、その来店に気づき、気持ちのよい挨拶が自然に出るかどうかです。

ただ大きな声を出せばよいとは考えていません。声の調子や表情、タイミングなども含めて、歓迎していることが相手に伝わるかを重視しています。

入店したときにスタッフから反応がなければ、「入ってよかったのだろうか」「忙しそうだから声をかけにくいな」と感じる方もいると思います。反対に、顔を向けて気持ちよく挨拶をしてもらえれば、その後も商品を見たり、質問したりしやすくなるのではないでしょうか。

社長である私が来たから挨拶をする、ということを求めているわけではありません。確認したいのは、初めて来店されたお客様に対しても、同じように反応できる状態になっているかです。

もちろん、店内では接客以外の仕事もあります。作業に集中していると、入口への意識が薄くなることもあるでしょう。だからこそ、個人の気配りだけに任せず、チームとして来店に気づけるように考える必要があります。

また、挨拶をすることと、すぐに接客を始めることは別です。まずはゆっくり見たいお客様もいらっしゃいます。歓迎していることはきちんと伝え、その後はお客様の様子に合わせる。その両方が必要だと考えています。

LIFE六丁の目店の壁一面に並ぶスニーカー
カテゴリーがひと目で伝わり、比較しやすい配置になっているかを見ます(LIFE六丁の目店)。

ポイント④:商品配置から、店が何を提案したいのかを見ます

入口の企画売場を確認した後は、売場全体の商品配置を見ます。

ここでは、商品の乱れと、ブランドの打ち出し方を確認します。

ラックや棚が乱れていないか、商品が重なって見えにくくなっていないか、実際に手に取って確認しやすいか。商品がたくさんあることだけでなく、お客様が選びやすい状態になっていることが大切です。

例えば、スタッフにとっては、どこに何があるか分かっている売場でも、お客様には分かりにくいことがあります。商品を多く並べた結果、一点ずつの特徴が見えなくなっていれば、その商品の魅力を十分に伝えられていないかもしれません。

もう一つ見ているのは、店として何を強く提案したいのかです。

どのブランドに力を入れているのか、どのコーナーを見てもらいたいのかが、商品配置から分かるかを確認します。入口で伝えた内容と、店内で実際に見られる商品や売場に違和感がないことも重要です。

LIFE中倉店で売場を整えるスタッフ
挨拶や接客だけでなく、日々の売場づくりにもお客様を迎える姿勢が表れます(LIFE中倉店)。

入口の企画売場が「今、何を見てほしいか」を伝える場所だとすれば、売場全体では「この店は何に強く、どんな商品を選べるのか」が伝わってほしいと思っています。

ブランドリユースセレクトショップでは、コンセプトに合った商品を選ぶだけでなく、その選び方がお客様に分かるように見せることも仕事です。商品を配置したスタッフには意図があっても、お客様に伝わらなければ、見せ方を考え直す必要があります。

LIFE中倉店のガラスケースに並ぶシルバーアクセサリー
細かな商品ほど、見やすさと清潔さが安心感につながります(LIFE中倉店)。

ポイント⑤:お客様側から、店内の清潔さを確認します

最後は店内のクリンネスです。ここでいうクリンネスとは、汚れを取り除くことに加えて、整理整頓を含め、清潔で気持ちよく過ごせる状態を保つことです。

特に目が向くのが、カウンターと売場です。

カウンターに業務用の道具や書類が広がっていないか、不要なものが置かれていないか。売場にほこりや汚れがないか、お客様が商品を見るときに気になる状態になっていないかを確認します。

カウンターは、スタッフ側から見ると仕事をする場所です。必要なものを手元に置いておきたい気持ちも分かります。しかし、お客様側から見れば、商品について相談したり、購入や買取の手続きをしたりする場所でもあります。

スタッフには合理的な置き方でも、お客様からは雑然として見える場合があります。ここでも、働く側の都合だけで考えないことが大切です。

カウンターを見るときも、お客様の立場で「ここに大切な商品を置きたいと思えるか」「落ち着いて話ができるか」という感覚を意識しています。

売場の清潔さも同じです。商品に詳しくなくても、棚の汚れやカウンターの乱れは目に入ります。商品やブランドの魅力を伝える前に、そうしたところが気になってしまう状態にはしたくありません。

営業中は商品が動きますし、作業も発生します。一度整えれば、そのまま保てるわけではありません。だからこそ、きれいにすることだけでなく、日々の仕事の中で状態を確認し、整え直せることが必要だと考えています。

五つのポイントから、決めたプロセスの実施状況を確認する

ここまでの五つは、外観や売場、挨拶、清潔さという、一見すると基本的なことばかりです。

しかし私にとっては、当社の「証明されたプロセス」や各「コアプロセス」が、実際の店舗で実施されているかを確認するための重要なポイントでもあります。

当社ではEOSの考え方に沿って、お客様へのサービスや日々の業務の進め方を整理しています。会社として決めたことが、資料やマニュアルに書かれているだけではなく、現場で実行されていることが重要です。

お客様は、私たちの社内資料を見るわけではありません。外から店を見て、入口を入り、挨拶を受け、商品を選ぶ中で、実際に見聞きしたことから店を判断します。

例えば、店として何を打ち出すかが決まっていても、入口の売場から伝わらなければ、実際の見せ方を確認する必要があります。接客・接遇を強みにしていても、来店時の反応がなければ、その強みは最初の場面では伝わっていません。

ただし、最初の3分だけで、すべてのプロセスが実行されているかを判断できるわけではありません。気になったことがあれば、現場で何が起きているのかを確認する必要があります。

その際には、「決めたことが実行されていない」のか、「決めたやり方では、お客様にとって十分な状態にならない」のかを分けて考えることが大切だと思っています。

実施されていないのであれば、やり方や役割が十分に伝わっているかを確認する必要があります。実施していても良い状態にならないのであれば、手順そのものを見直す必要があるかもしれません。

気づいたことをその場で直すだけでなく、日常的に良い状態をつくれるようにする。お客様の感覚を大切にしながら、改善は個人の頑張りだけに頼らず、プロセスに結びつけて考えたいと思っています。

これからTGMで働く方にも、大切にしてほしい視点

店舗の仕事を覚えると、自分が担当する作業や、店側の事情がよく分かるようになります。それは必要なことですが、慣れるほど、お客様にはどう見えているかを意識して確認する必要も出てくると思います。

これからTGMで働く方にも、自分の仕事を覚えることと同時に、お客様の側から店を見ることを大切にしてほしいと考えています。

LIFE六丁の目店の2階から見下ろした売場全体
売場を俯瞰すると、導線や整理状態、スタッフから見えにくい場所も確認できます(LIFE六丁の目店)。

初めて店を見たときに、どこが分かりやすく、どこで迷ったのか。どの商品が目に入り、何が気になったのか。そうした感覚は、長く働いている人が見落としていることを教えてくれる場合があります。

最初からすべてのブランドや商品に詳しくなくても、入口の汚れや商品の見えにくさ、挨拶を受けたときの気持ちは分かります。その気づきを持ち、チームに伝え、決めた仕事の進め方に沿って改善していくことも、店舗を良くするための大切な仕事です。

私が最初の3分で確認しているのは、特別な演出ができているかではありません。外から見て入りやすく、入ったときに歓迎され、店の提案が分かり、清潔な環境で商品を選べるかということです。

私たちが「できている」と考えることと、お客様が「気持ちよく利用できた」と感じることは、必ずしも同じではありません。 その違いを見落とさないように、これからもお客様の目線を基準に店舗を見ていきたいと考えています。